2005年11月13日

第二話(推敲前)

大将軍の依頼で新たな次元世界へと旅立ったガンダムフォース。
しかし、その途中で未来のネオトピアで生まれた新たな仲間、サイサリスからの攻撃を受ける。
キャプテンを敵と誤認したサイサリスは強力な次元破壊兵器でシュウトたちを攻撃する。
辛くも直撃を免れたものの、その攻撃の余波は大きく次元空間を歪ませる。
時空の歪はゼロとリリ姫、爆熱丸をそれぞれ別の時間、次元へと飛ばしてしまう。

第二話 「勇気の騎士、ストライク」

サイサリスの攻撃により生じた次元の歪みに飲み込まれたゼロとリリ姫。
必死にリリ姫の体をかばったゼロだったが、時空を超える衝撃に耐え切ることは出来なかった。
ゼロが目覚めたときには、一人で湖の淵に倒れていた。
「……ここは?・・・姫!姫は!」
あわてて周囲を見回すが、それらしい姿は見当たらない。
「まずい。ここがどこかも分からぬというのに、姫を一人にしては・・・!」
急いでリリ姫を探すべく、空へと飛び立つ。しかし・・・
ゼロの意思に反して、魔法のマントはその力を発揮してくれない。
「何!?」
いつもは自在に飛べたはずの空。しかしここではどういうわけかその力が振るえない。
「魔法が・・・マナの力が希薄な世界か・・・」
ラクロアの最深部にある<ダークホール>と同じく、この世界はマナの力が極端に薄い。
マナの力を借りて魔法を行使するゼロにとっては、この世界ではその力が半減してしまうことになる。
「いかん!魔法の力が使えぬ状況では、さらに姫の身が・・・!」
強靭な体を持つガンダム族と違い、リリ姫は生身の人間である。
強力な魔法を使えるとはいえ、それが封じられてはか弱い女性に過ぎない。
「姫!姫―!返事をしてください!どこにおられるのですか!?」
叫ぶゼロ。こうなっては必死に呼びかけるしかない。
かつてダークホールに落とされたときも感じた屈辱。
(魔法の力が使えぬ我が身の、なんと非力なことか)
魔法の使えぬ状況ではたった一匹のバグバグにも苦戦してしまう。
マナの希薄なこの世界で、果たして姫を守れるのか・・・
苦悩するゼロを、一つの叫び声が呼ぶ。
「この声は・・・姫!」
間違えるはずがない。リリ姫の悲鳴が聞こえる。
「こっちか・・・間に合ってくれ!」
空の飛べない今、走っていくしかない。
普段魔法に頼っていた分、歩みの遅さが一層腹立たしい。
(爆熱丸のように・・・もっと速く!)
遠い別世界にいるであろう友の姿を思い描きながら、その姿に自らを重ねる。
(もっと・・・速く!)
声は、湖のほとり。森の少し奥から聞こえる。
「姫―!」
茂みを抜けた先に、姫はいた。
「ゼロ!」
間に合った。
安堵したのもつかの間。姫の前に立ちふさがる影に、ゼロはまたも驚愕する。
「こいつは・・・モンスター!」
「ゼロ!危ない!」
新たに現れた敵に対し、緑色をした不気味な生き物は即座に攻撃に出た。
手にしたいびつな斧を振り上げ、ゼロに襲い掛かる。
醜悪な一つ目が怪しく輝く。
「おのれ・・・姫には手出しはさせん!
来たれ!古より伝わりし聖なる魔法の剣……ヴァトラスソード!」
マナの希薄な世界とはいえ、ダークホールのように完全に遮断されたというわけではない。
ヴァトラスソードは普通の召還魔法とは違う。特別な契約によりゼロに仕える剣なのだ。
召還に応じ、魔法の剣と盾が現れる。
「剣さえあれば、お前のようなものに負けはしない!」
魔法と並び、ゼロの得意とする剣技が敵に襲い掛かる。
斧を真正面から叩き折る。
「これ以上戦うというのならば、次は・・・自身がこうなると知れ!」
ゼロの気迫に敵は恐れをなしたように逃げ出した。
剣を納め、ひざまずく。
「姫、お怪我がなくて何よりです。遅れて申し訳ありませんでした」
「構いません。良くぞ来てくれました」
顔を上げ、周囲を見渡す。
「それにしてもここは、いったいどこなのでしょうか。マナのこれほど希薄な世界が存在していたとは・・・」
「私達が飛ばされたのはいつの時代のどの世界とも知れません。そのような場所があったとしても不思議ではないのでしょうが・・・しかし、先ほどのモンスターは」
リリ姫を襲ったいびつな形の生物。ゼロも、古い文献で少しだけ眼にしたことのあるその形。
「私も、見覚えがあります。確か、アレは・・・」
「モンスター=ゴブリン・ザク。モンスターとしては最下級の部類に入るものですが・・・」
問題は、そのモンスターは遥か古に既に消滅しているということ。
そして、その文献がラクロアのものであること。
「それではここは・・・ラクロア。しかも、遥か太古のラクロア・・・」
「間違いありません。私達は英知の園にすら僅かに記録が残っていないほどの過去にやってきたようです」
古の文献には、かつてこのラクロアにはモンスターと呼ばれる凶暴な怪物が存在していて、それらが次々と人々を襲っていたとある。
そして、そのモンスターを支配していたのが……
「っ!姫、危ない!」
記憶をたどっていた姫をゼロがかばう。
構えた盾に突き刺さる先ほどと同じ斧。
「おのれ、またか!」
森の奥から、先ほどと同じ赤い単眼が光って見える。
しかも、今度は複数。無数の眼が森の暗闇からこちらをのぞいている。
「何という数だ・・・!」
「いくらなんでも、これほどとは・・・」
次々と姿を現すゴブリンザク。その数は20を越えるほどだ。
それらが一斉に、大挙して押し寄せる。
「ここは私が食い止めます。姫はその間にお下がりください。もう少し走れば見通しの良い湖に出ます。そこまで何とかお逃げください!」
「しかし、この数では・・・魔法も使えないのですよ!」
「お急ぎください!」
振り上げた斧の内側に入って、そのまま体当たりをして一体目を弾き飛ばす。
剣を横なぎに払って近づく残りを牽制する。
しかし、包囲は徐々にせまくなる。
敵には知性がある。統一された意思の元に襲い掛かってくるのだ。
「このままでは・・・」
ゼロの剣が6体目の敵に止めを刺す。しかし、7体目の敵がリリ姫の側まで迫っていた。
「キャアッ!」
「姫―っ!」
身を挺してリリ姫をかばう。無防備な背中に、大きく振りかぶった斧が襲い掛かる。
その刹那!
「伸びろ!電磁スピア!!」
鮮烈な声とともに一条の光が敵をなぎ払う。
敵を横一列に串刺しにしたスピアは、身に帯びた強力な電流でモンスターを次々と気絶させる。
ザクの注意が新たな敵へと向けられる。
そこには、長く伸びたスピアを手にした一人の騎士が立っていた。
「我が名はストライク。勇気の騎士、ストライク!
モンスターどもよ、今度はボクが相手だ!!」
ストライクと名乗る騎士はスピアから手を離すと、盾から取り出した剣で次々にザクたちを蹴散らしていく。
体勢を立て直したゼロもそれに加勢する。
見る間にモンスターはその数を減らしていくのだった。

今度こそモンスターの気配が消えたのを確認してから、ゼロは見慣れぬ騎士に礼を告げた。
「私の名はゼロ、天駆ける翼の騎士、ゼロ。見知らぬ私達を助けていただき,感謝する」
「私はリリジマーナと申します。ここより遠く離れた異国より、見聞を広めるために旅をしております」
リリ姫は王族の名であるラクロアを名乗らなかった。ここが過去のラクロアであるならば、リリ姫の本名は色々と誤解を招く恐れがあるからだ。
「僕の名前はストライクです。ここラクロア王国の騎士団の団長を勤めています」
「ラクロアの騎士団・・・ラクロア親衛隊・・・!」
「ご存知ですか、遠い異国の方にも知られているとは、光栄です」
「ご存知も何も・・・」
ゼロは気まずそうに一つ咳払いをした。
(文献によるならば、この方は初代ラクロア親衛隊の団長ということになる。
私の・・・大先輩というわけか)
しかし、先輩というにはストライクの様子は随分と頼りなさげではあった。
先ほどの剣技は目を見張るものがあったが、こうしていると戦いのときの覇気はまったく感じられない。
「あの・・・こういうことを聞くのは失礼なのかもしれませんが・・・あなたのその身なりは、もしかしてあなたもガンダム族なのですか?」
「・・・その通りだが、それがどうかしたのか?」
「い、いえ。ボク以外のガンダム族を目にすることがあまりないもので、つい」
「今のラクロア親衛隊には、あなた以外にガンダムがいないのですか?」
リリ姫の疑問に、ストライクの声が大きく歪む。
「いえ・・・その・・・確かに今はボク一人なのですが・・・」
そのストライクの様子に、リリ姫は先ほど思い出しかけていた古い伝承の続きを頭の中で読み上げていた。
(古の昔に勇者あり。古の昔に魔王あり。その名は・・・ガンダム。
星振る時、二つに別れしその名は・・・やがて・・・)
やがて・・・
「とりあえず、ここは危険です。よろしければボクと一緒に王城にいらっしゃいませんか?
あなたのように力のある騎士ならば、きっと歓迎してくれることでしょう」
「ありがたい。是非ともそうさせて貰おう」
こうして、ゼロと姫はストライクの案内の元、太古のラクロア城へと向かったのだった。

「ようこそラクロアへ。私はこの国の王を務めているレビルと申します。今この国は他国からの侵略を受けており満足なもてなしが出来ない状況ですが、どうかご満足いただけるまでご滞在ください」
「王直々にそのようなお言葉、光栄の極みでございます」
恭しく、自分の先祖へと頭をたれるリリ姫。
王に対する敬意と、偉大なる祖先への敬意で、身の引き締まる思いであった。
「翼の騎士、ゼロと申します。王よ、失礼ながら私に出来ることがあればなんなりとご申し付けください。姫を救ってくださった恩を、是非とも返したく思います」
リリ姫はここより遠く離れた国の王族と説明してある。ゼロはその護衛ということになっている。
「それならば、ぜひ我がラクロア親衛隊に!あなたのような方が共にいてくれるというのならばボクも心強いです!」
「ストライク、いきなりそのようなことを言っては失礼であろうが。少々下がっていなさい」
王に咎められ、肩を落としてストライクは下がっていく。
「失礼しました。あの者は腕は確かなのですがなにぶん心が未熟で・・・。
勇者の名を持つものでありながら情けない話です」
「勇者の・・・名、ですか?」
「はい。このラクロアに古くから伝わる伝承です。
<星降るとき、大いなる地の裂け目から神の板持ちて勇者現る。その名はガンダム>
ストライクにはこのラクロアに来るまでの記憶がないのです。
彼がここに現れたときには、その手に不思議な石版を持っていました」
レビル王は、そこで大きくため息をついた。
何か、隠しているような口調である。
「なるほど、彼こそがその伝承にある勇者であると」
「私はそう信じております。ですが、まだまだ未熟。しかもラクロア親衛隊は長い戦で疲弊しており満足に戦えるものはごく僅か。ストライクではありませんが、あなたのように力のある騎士の力を是非ともお借りしたいのです」
「そういうことでしたら、ゼロ。あなたの力、このラクロアのために存分に振るいなさい」
「ははっ」
「おお!力を貸してくれると申すか。かたじけない。心から礼を言わせてもらう」
「いいえ、ラクロアのために力を尽くすことを、私は光栄に思います」
ゼロの言葉に、偽りはなかった。
元の世界に戻るあてはまったくないが、今危機にあるラクロアを捨て置くことなどゼロに出来るはずがない。
「それでは・・・翼の騎士、ゼロよ。そなたにラクロア親衛隊への入団を認めよう」
「ありがたき幸せ。このゼロ、偉大なるラクロア王に誓い、ラクロア親衛隊として恥じぬ働きをして見せます」
こうして、ゼロは二度目のラクロア親衛隊への入団を果たすのであった。

「ゼロ、あなたに言っておかねばならないことがあります」
御前を下がり、あてがわれた部屋でリリ姫はゼロに静かに告げた。
「ラクロア王家に代々伝わる伝承です。間違いなく、この時代のことを表しているものです。
いいですか。この世界にはあなた以外に二人のガンダムが存在します」

古の昔に勇者あり。古の昔に魔王あり。その名は・・・ガンダム。
星振る時、二つに別れしその名は・・・やがて・・・

「その二人のガンダムを、けして争わせてはなりません。なぜならば、この二人のガンダムこそが・・・」
そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「すいません。入ってもいいですか?」
この声は、ストライクである。何か急いでいるような声だった。
「ゼロ、この話はまた今度にしましょう。
どうぞ、お入りになってください」
「ありがとうございます。失礼します」
ストライクがドアを開けようとした、その時!
轟音が城全体を揺るがす。
二人の部屋の壁に大きな穴が開く。
何者かが強大な力で城壁ごと打ち砕いたのだ。
「な・・・!」
「どうしたんですか!?」
呆然とするゼロ。あわてて入ってくるストライク。
そして……
「キャアッ!」
響き渡る姫の悲鳴。
立ち上る砂煙の中、真紅の影が姫を連れ去っていった。
「おのれ・・・何者だ!姫を放せ!!」
「き、君は・・・!?」
明らかな同様の声を上げるストライクをよそに、ゼロは姫をさらった影に斬りかかる。
すると、影が呪文を詠唱する。
「暗黒の闇より生まれしダークネス=マナよ。魔王との契約の元、今こそその力を我に与えよ・・・」
「この呪文は・・・、それに、魔王だと!?」
ゼロの一瞬の隙を突き、姫を連れ去った影は大きく空を飛ぶ。
間違いなく、それは魔法の力だった。
「くたばれ、ストライク!
超魔法・・・クリムゾン=トルネード!!」
真紅のバラの花びらが絶大な嵐を伴って部屋の中に殺到する。
「いかん!
ブリティスシールドよ!私に力を!!」
盾に秘められた魔法の力が、かろうじて敵の超魔法を食い止める。
しかし、防御範囲はゼロの周囲のみで、その外にいたストライクは敵の魔法の直撃を受けた。
(このマナの希薄な世界で、これほど強力な魔法を使うとは・・・!)
「おのれ・・・一体貴様は・・・」
「ほう、私の魔法を防ぐとは、貴様もガンダムか・・・」
「ぐ・・・やめろ、姫を放すんだ・・・!」
壁に突き刺さった体を起して、必死にストライクが呼びかける。
先ほどの魔法の嵐が立ち込めていた砂煙を一掃していた。
ゼロは壁にあいた穴から外に飛び出す。
そして夜空に浮かぶ姫と、その体を捉えた真紅の影を見上げた。
見まごうことなく、それはガンダム。
真紅のガンダムだった。
「我が名はイージス。魔王、イージスガンダムである!」

次回予告

ラクロアの伝承に残る二つのガンダムの名。
繰り返す歴史、繰り返す悲劇。
ぶつかり合う二人のガンダム。
かつての親友は、歴史を繰り返すかのように袂を分かつ。
ラクロア親衛隊として旅立つゼロとストライクは、
石版と、そして伝説の三つの神器を探す旅に出る。

第三話「三種の神器-力の盾-」



【日記の最新記事】
posted by 通常の名無しさんの3倍 at 06:17| Comment(32) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月03日

第一話


第一話「その名はサイサリス」

大将軍の作り出した井桁ゲートをくぐっている途中の出来事である。
シュウトは周囲の景色を眺めながらキャプテンに話しかける。
「ずいぶんと長いね。元気丸が作ったゲートのときは一瞬で目的地についちゃうのに」
「それだけ距離と時間が離れているということなのだろう。この空間はザクレロゲートよりも、どちらかというと我々の使う次元転送装置に近いようだ」
頷きながら再び周囲の景色に目を向ける。
この光景はシュウトに、かつて漂流したことのあるミノフス境海を思い起こさせた。
この景色は、今まで見てきたどんな場所ともかけ離れていた。
ミノフス境海と同じ、何も無い空間。
「私たちの使う次元転移の魔法陣も似たようなものです。原理自体は、空間と時間を魔法の力で移動するもの。キャプテンの言うように、これから私たちの向かう場所はネオトピアから遠く離れたところにあるのでしょうね」
「ん?どうした爆熱丸。さっきから一人黙ったままではないか」
「・・・俺は、どうにもこんな地に足の着かないところは好かんのだ」
みんなに背を向けて一人うずくまるようにしていた爆熱丸だが、どうやら落ち着かなくて震えていただけのようだ。
「はっはっは。相変わらず弱虫なところは変わらんなあ」
ここぞとばかりに大笑いするゼロ。
普段から使う魔法やそれに連なる伝承に詳しいゼロは、こういった得体の知れない事象に対する恐怖に耐性がある。
残念ながら、今の爆熱丸には言い返すだけの気力が無かった。
「キャプテン。ボクたちがどこに向かっているのか分からないかな?」
「残念ながら、不明だ。私には時空空間に関する探索能力が備わっていないのだ」
「大将軍殿もそれくらい教えてくだされよろしいのに。見かけによらずそそっかしいところがあるのかもしれませんわね」
「だ、大将軍様の悪口は許さんぞ!大将軍様には、何か深いお考えがあるのだ」
「爆熱丸!姫に対して無礼であろうが!」
「その姫が無礼だというのだ!こちらを非難する前にそちらの非礼を詫びぬか!」
「なんだと!」
異空間の恐怖にようやく慣れたところに、すべての武者の頂点に立つ大将軍をけなされた怒りで、ようやく爆熱丸にも本来の調子が戻ってきた。
喧嘩を収めようとするシュウトとリリ姫だったが、それをさらにキャプテンが止める。
「全員、気をつけろ!我々以外の何かが、この空間にいる」
「!」
突然、キャプテンのセンサーに反応が現れた。
キャプテンのセンサーに捉えられるということは、同じ空間、つまりすぐ近くに何かがいるということである。
「こんな場所に一体誰がいるって言うんだ!」
「解析不能・・・いや、待て・・・これは!」
キャプテンのライブラリに相手から直接識別コードが送られてくる。
それは、キャプテンの知っているモビルシチズンのコードだった。
正確には少し違う。キャプテンがこれから知ることになるコード。
やがては製作されるであろう、今は空白の製造コードがそこに打ち出されていた。
キャプテンがそれにとまどっている隙に、目の前の空間が歪曲し、一つの影を生み出す。
複雑に絡み合う曲線が像を結ばぬうちに影は、己が正体とその目的を告げた。
『ネオトピアへの侵攻に対し、こちらは特例として武装火器の使用を許可されている。
わが名はサイサリス。ガンダムフォースのGP-02サイサリス。
速やかに武装を解除し、撤収せよ!』
「GP-02・・・!」
「サイサリスだと!?」
キャプテンたちの目の前に現れたのはネオトピア製のモビルシチズンであった。
キャプテンや、かつて戦ったマナドッグに良く似たフォルム。両者に比べて装甲の厚い上半身が特徴的である。
ただ、二人と決定的に違うのが、明らかに戦闘を目的とされて設計されているその形状である。
厚い装甲に、所々に装備されている武装火器。
サイサリス自身が先ほど宣告したように、ネオトピアのモビルシチズンは基本的に武装することを禁じられている。
それはキャプテンとて例外ではない。戦闘の無い時は武装火器を内蔵したパーツを外したモビルシチズンモードで生活している。
しかし、サイサリスの武装は構造の根幹に関わるような物が多い。
彼の装備している武器は、彼が製造されたときから既に彼の一部となっていたのだろう。
その武器を取り外すことは、おそらく彼自身の死を意味する。
戦うために生まれてきたようなその形状に、キャプテンは何か嫌な感覚を覚えた。
彼のソウルドライブが、直感という形で警告を発しているのだ。
「ガンダムフォースの・・・キャプテンの仲間!」
「ならば、なぜこちらを敵とみなしているのだ。あれではまるで、我々がネオトピアに侵攻・・・そんな・・・まさか!」
「そんな・・・じゃあこれから僕たちの向かう場所って・・・!」
戸惑うシュウト。しかしサイサリスの行動には淀みは無い。
『武装を解除しない場合、敵対勢力とみなす。速やかに武装を解除せよ!』
「サイサリス。こちらはガンダムフォースのキャプテンガンダム。GP-01ハイパーキャプテンだ。我々はそちらと敵対する意思は無い」
キャプテンも同じくサイサリスに識別コードを送る。もしもサイサリスが未来のモビルシチズンであるならば、当然キャプテンの識別コードを認識できるはずだ。
『識別コード受信・・・GP-01ハイパーキャプテン・・・識別コードとの一致を確認』
「サイサリス。どうやら私たちは過去から未来のネオトピアに向かう途中のようなのだ。
おそらくは君のいる時代なのだろう。そして、私たちの受けた要請はこれから向かう次元世界の脅威を取り除くことだ。何か君の助けに・・・」
キャプテンの言葉は一発の銃弾によって中断させられた。
サイサリスの威嚇射撃だ。
「サイサリス!?」
『識別コード確認。GP-01ハイパーキャプテン。敵対勢力の識別コード承認。
このコードは最優先での破壊目標である。よって、武装解除の有無に関わらず最大火力でもって殲滅する!』
「なんだと!」
「そんな!なんで同じガンダムフォースで争わなくちゃいけないの!?」
「キャプテン、何とかならんのか!?」
「駄目だ・・・既に戦闘モードに移行している。彼はこうなったら敵と認識した対象を殲滅するまで戦闘を停止できない・・・!」
キャプテンはそう説明しながら、自分がどれほど恐ろしいことを口にしているのかを実感していった。
送られてきた識別コードには、サイサリスのほぼすべてのスペックが同封されていた。
サイサリスには敵勢力を認識すると自動的に戦闘モードに移行するように設計されている。
(これでは・・・これではまるで・・・!)
キャプテンの中に、言い知れぬ感情が芽生えていった。
今までに感じたことのないもの。それは・・・ひょっとしたら強い、強い怒りだったのかもしれない。
しかし、今のキャプテンにはその感情を分析する時間はなかった。
「サイサリス!目を覚ませ!我々は・・・君の敵ではない!!」
『・・・』
サイサリスは答えない。
キャプテンは知っていた。戦闘モードに移行したサイサリスは、他者との通信を一切受け付けない。
敵を殲滅するまでは、彼は戦闘に関係のない行為のすべてを停止するのだ。
しかしそれでも、キャプテンは呼びかけた。
それは、戦闘行為をとめようとする物ではなく、サイサリスという存在そのものに対する叫びだった。
「サイサリス!!」
「キャプテン・・・」
シュウトには、キャプテンの辛さが良く理解できた。
認めたくない、信じたくない。キャプテンのソウルドライブが、心が大きく傷ついている。
しかしサイサリスは止まらない。
敵を打倒すべく、背中に背負った強大なる武器を引き出してゆく。
その武器は、彼の背中から『生えて』いた。
おそらくは彼の主動力たるソウルドライブに直結しているのだろう。
『破壊目標をロック。出力上昇!』
「いかん、あれは・・・!」
キャプテンに送られてきた識別コードには、その武器のことも含まれていた。
そのスペックも。そして、それをこの空間で使えばどのような結果が訪れるかも。
・・・守らなければ・・・!
キャプテンに意思に呼応して、胸のソウルドライブが光を放つ。
シュウト達をかばうように両手を広げる。
「ゼロ!爆熱丸!ガンダムフォース=スペシャルフォーメーションだ!
サイサリスに、あの武器を打たせてはいけない!」
キャプテンの右拳が眩い閃光を帯びていく。
ソウルドライブから得られる莫大な出力を、最高の効率で体内の回路が拳にエネルギーとして変換していく。
しかし・・・
『遅い!貴様のソウルドライブの起動時間は最速で0.9987秒。わが武器の起動時間は0.2233秒。後から起動して間に合うはずが無い!!
受けるがいい、わが最強最大の時空破壊兵器<ディメンショナル=アトミックバズーカ>!!』
キャプテンのソウルドライブは、起動から発動までに若干のタイムラグが生じる。
サイサリスのバズーカ同様、キャプテンのソウルドライブの回路は他の武装火器とは全く違ったシステムで構築されている。
しかし、その力はすべからく戦闘のために用いられるのではない。
時には感情を生み出し、人とコミュニケーションをとるための回路としても作動する。
そのため、武器としての力を発動させるためには若干余計な処理が混じってしまうのである。
サイサリスのバズーカから恐ろしい光が漏れ出てくる。
緑色の、禍々しい破壊力を内に秘めた光。
シュウトは、かつて一度だけその光を見たことがあった。
かつての天宮で、ダークアクシズの首領ジェネラル=ジオングの放った悪魔の光。
時空破壊兵器<デスレイン>と同じ光であった。
「ゼロ!このままでは間に合いません!」
「はっ、承知!」
間に合わないと悟ったリリ姫はゼロとともに呪文を唱える。自分に使える最強の防御呪文だ。
爆熱丸とキャプテンも、攻撃の阻止から敵弾の迎撃へとその目標を変える。
『超魔法・・・アイシールド!!』
『火炎熱風奥義・・・剣風・天驚剣!!』
『ハイパー=キャプテンパンチ!!』
ゼロとリリ姫の魔法が全員を包み込み、キャプテンと爆熱丸の必殺技が敵弾に激突する。
(あの光が、もしあの時と同じ物ならば・・・私たちは助からない・・・!)
絶望的な気持ちで魔法を維持するリリ姫。
かつてジェネラルの放った<デスレイン>の破壊力は、空間どころか次元世界そのものすらも破壊する威力を秘めていたのだ。
あれは既に、兵器と呼べる物ですらない。立ち向かうすべなど、ありはしない。
しかし、リリ姫は願う。
(あれを防げるとしたら・・・今一度あの力を・・・!)
かなわぬ願いと知りつつも、リリ姫は願った。あのジェネラルを倒したときに、たった一瞬だけ見えたあの光の力を・・・
悪魔の兵器を跳ね除け、ジェネラルを打ち砕いたあの光の力ならば・・・!
だが、キャプテンの拳にもゼロの魔法にも爆熱丸の剣にも、その光は宿らない。
みなの力だけを乗せた攻撃が、ただ一点へと収束していく。
それでも、現実はそう悪い方向にばかりも進まない。
サイサリスの放った弾は爆熱丸の剣に切り刻まれ、キャプテンの拳に吹き飛ばされる。
切れ切れになった光も、魔法の防御を突破することは無かった。
質が同等でも、規模に違いがあったのだ。
ジェネラルの放った<デスレイン>は、世界中のエネルギーを吸収したあの巨体から打ったものだ。
いかにソウルドライブといえども、単体で行使する力には限りがある。
『目標破壊失敗。しかし、目的達成を確認。直ちに帰還する』
それだけ言うと、現れたときと同じようにサイサリスは複雑な模様のような像となって消えていった。
「まて!俺と勝負しろ!」
爆熱丸が追いすがるが、それもキャプテンが止める。
「ええい、キャプテン!邪魔立てするな!」
「全員、一箇所に集まれ!『裂け目』に飲み込まれてしまうぞ」
「なんだと!?」
爆熱丸が振り向くと、ゲートの様子が激変していた。
荒れ狂う風のような流れが、容赦なく全員に吹き付けている。
その流れの強さは、ガンダミウム製の身体すらも容易に吹き飛ばすほどだ。
「きゃああ!」
「姫!」
キャプテンの忠告もむなしく、リリ姫とゼロがものすごい勢いで吹き飛ばされてしまった。
ミノフス境海と同じく、強い力同士が衝突したために空間に裂け目が生じたのだ。
しかもサイサリスの武器は次元空間にも影響を与え、ここは時空空間を越えるゲート。
行き着く先は何処で、何時かも分からない。
リリ姫を抱きかかえながら、ゼロはひときわ大きく開いた裂け目に飲み込まれてしまった。
「ゼロ!リリ姫!」
「おのれ・・・このままでは・・・!」
「爆熱丸!」
必死にキャプテンにしがみついていた爆熱丸に何かが衝突する。
「おおっ!こ、これは!」
それは、何の変哲も無い丸々としたスイカだった。
「なぜこのようなところにスイカがあるのだー!?」
叫びながら、爆熱丸も別の大きな裂け目へと飲み込まれていく。
「爆熱丸―っ!」
「シュウト、危険だ。私から離れるな!」
そういうキャプテンも、この状況では成す術も無い。
荒れ狂う奔流の前では彼のスラスターも無力に等しい。
ただ、シュウトと離れ離れにならぬようにするだけで精一杯であった。
「みんな、どこに行っちゃったのかな?もう・・・会えないの?」
「分からない。今度ばかりは・・・。それに、私たちもこのままでは・・・!」
キャプテンたちの目の前に、大きな亀裂が生じた。
今までに無い規模の裂け目は、圧倒的な力で二人を吸い寄せていく。
「くっ・・・このままでは!」
「キャプテン!」
スラスターの出力は既に臨界だ。ソウルドライブもフルパワーで起動している。
それでも、この裂け目に吸い込まれることを防ぐことは出来ない。
絶望しかけたキャプテンのセンサーに、またも新しい反応が現れる。
巨大な裂け目のさらに向こう・・・。センサーの有効に働く空間からだ。
「シュウト。出口だ!もうすぐで目的地に着くぞ!」
「でも・・・これじゃあの裂け目に先に飲み込まれちゃうよ!」
「・・・間に合ってくれ!」
新たに生まれた反応はまっすぐこちらに向かってくる。
識別コードは不明。未識別のコードだ。
しかし、その形状だけはキャプテンのライブラリに該当する物がある。
その物体は、時限の裂け目に吸い込まれること無くこちらに到着した。
「あれは・・・」
「オプションZ!」
かつての決戦で装備した物とは若干形状が異なるが、それは間違いなくオプションZであった。
キャプテンはすぐさま背中のバックパックを緊急廃棄。オプションZへと換装する。
「この出力ならば・・・行けえ!」
「キャプテン、がんばれー!!」
シュウトの応援を受けて、ソウルドライブの出力がさらに増す。
オプションZの出力は一気に上昇し、からくも時空の裂け目から逃げ出すことに成功した。
「やったー!」
「このまま、ゲートの向こうに突入する!」
二人は、時空の裂け目を越えてゲートの向こう側、未来のネオトピアへと向かった。

次回予告

時空の裂け目に飲み込まれたリリ姫とゼロ。
行き着いた先に広がる懐かしい光景。
二人の故郷ラクロアがそこにあった。
しかし、そこは歴史上の伝説が眠る太古のラクロア。
伝説の勇者と魔王の物語の始まり。
そして神の誕生の序曲であった。

第二話 「勇気の騎士、ストライク」

posted by 通常の名無しさんの3倍 at 06:40| Comment(3) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。