しかし、その途中で未来のネオトピアで生まれた新たな仲間、サイサリスからの攻撃を受ける。
キャプテンを敵と誤認したサイサリスは強力な次元破壊兵器でシュウトたちを攻撃する。
辛くも直撃を免れたものの、その攻撃の余波は大きく次元空間を歪ませる。
時空の歪はゼロとリリ姫、爆熱丸をそれぞれ別の時間、次元へと飛ばしてしまう。
第二話 「勇気の騎士、ストライク」
サイサリスの攻撃により生じた次元の歪みに飲み込まれたゼロとリリ姫。
必死にリリ姫の体をかばったゼロだったが、時空を超える衝撃に耐え切ることは出来なかった。
ゼロが目覚めたときには、一人で湖の淵に倒れていた。
「……ここは?・・・姫!姫は!」
あわてて周囲を見回すが、それらしい姿は見当たらない。
「まずい。ここがどこかも分からぬというのに、姫を一人にしては・・・!」
急いでリリ姫を探すべく、空へと飛び立つ。しかし・・・
ゼロの意思に反して、魔法のマントはその力を発揮してくれない。
「何!?」
いつもは自在に飛べたはずの空。しかしここではどういうわけかその力が振るえない。
「魔法が・・・マナの力が希薄な世界か・・・」
ラクロアの最深部にある<ダークホール>と同じく、この世界はマナの力が極端に薄い。
マナの力を借りて魔法を行使するゼロにとっては、この世界ではその力が半減してしまうことになる。
「いかん!魔法の力が使えぬ状況では、さらに姫の身が・・・!」
強靭な体を持つガンダム族と違い、リリ姫は生身の人間である。
強力な魔法を使えるとはいえ、それが封じられてはか弱い女性に過ぎない。
「姫!姫―!返事をしてください!どこにおられるのですか!?」
叫ぶゼロ。こうなっては必死に呼びかけるしかない。
かつてダークホールに落とされたときも感じた屈辱。
(魔法の力が使えぬ我が身の、なんと非力なことか)
魔法の使えぬ状況ではたった一匹のバグバグにも苦戦してしまう。
マナの希薄なこの世界で、果たして姫を守れるのか・・・
苦悩するゼロを、一つの叫び声が呼ぶ。
「この声は・・・姫!」
間違えるはずがない。リリ姫の悲鳴が聞こえる。
「こっちか・・・間に合ってくれ!」
空の飛べない今、走っていくしかない。
普段魔法に頼っていた分、歩みの遅さが一層腹立たしい。
(爆熱丸のように・・・もっと速く!)
遠い別世界にいるであろう友の姿を思い描きながら、その姿に自らを重ねる。
(もっと・・・速く!)
声は、湖のほとり。森の少し奥から聞こえる。
「姫―!」
茂みを抜けた先に、姫はいた。
「ゼロ!」
間に合った。
安堵したのもつかの間。姫の前に立ちふさがる影に、ゼロはまたも驚愕する。
「こいつは・・・モンスター!」
「ゼロ!危ない!」
新たに現れた敵に対し、緑色をした不気味な生き物は即座に攻撃に出た。
手にしたいびつな斧を振り上げ、ゼロに襲い掛かる。
醜悪な一つ目が怪しく輝く。
「おのれ・・・姫には手出しはさせん!
来たれ!古より伝わりし聖なる魔法の剣……ヴァトラスソード!」
マナの希薄な世界とはいえ、ダークホールのように完全に遮断されたというわけではない。
ヴァトラスソードは普通の召還魔法とは違う。特別な契約によりゼロに仕える剣なのだ。
召還に応じ、魔法の剣と盾が現れる。
「剣さえあれば、お前のようなものに負けはしない!」
魔法と並び、ゼロの得意とする剣技が敵に襲い掛かる。
斧を真正面から叩き折る。
「これ以上戦うというのならば、次は・・・自身がこうなると知れ!」
ゼロの気迫に敵は恐れをなしたように逃げ出した。
剣を納め、ひざまずく。
「姫、お怪我がなくて何よりです。遅れて申し訳ありませんでした」
「構いません。良くぞ来てくれました」
顔を上げ、周囲を見渡す。
「それにしてもここは、いったいどこなのでしょうか。マナのこれほど希薄な世界が存在していたとは・・・」
「私達が飛ばされたのはいつの時代のどの世界とも知れません。そのような場所があったとしても不思議ではないのでしょうが・・・しかし、先ほどのモンスターは」
リリ姫を襲ったいびつな形の生物。ゼロも、古い文献で少しだけ眼にしたことのあるその形。
「私も、見覚えがあります。確か、アレは・・・」
「モンスター=ゴブリン・ザク。モンスターとしては最下級の部類に入るものですが・・・」
問題は、そのモンスターは遥か古に既に消滅しているということ。
そして、その文献がラクロアのものであること。
「それではここは・・・ラクロア。しかも、遥か太古のラクロア・・・」
「間違いありません。私達は英知の園にすら僅かに記録が残っていないほどの過去にやってきたようです」
古の文献には、かつてこのラクロアにはモンスターと呼ばれる凶暴な怪物が存在していて、それらが次々と人々を襲っていたとある。
そして、そのモンスターを支配していたのが……
「っ!姫、危ない!」
記憶をたどっていた姫をゼロがかばう。
構えた盾に突き刺さる先ほどと同じ斧。
「おのれ、またか!」
森の奥から、先ほどと同じ赤い単眼が光って見える。
しかも、今度は複数。無数の眼が森の暗闇からこちらをのぞいている。
「何という数だ・・・!」
「いくらなんでも、これほどとは・・・」
次々と姿を現すゴブリンザク。その数は20を越えるほどだ。
それらが一斉に、大挙して押し寄せる。
「ここは私が食い止めます。姫はその間にお下がりください。もう少し走れば見通しの良い湖に出ます。そこまで何とかお逃げください!」
「しかし、この数では・・・魔法も使えないのですよ!」
「お急ぎください!」
振り上げた斧の内側に入って、そのまま体当たりをして一体目を弾き飛ばす。
剣を横なぎに払って近づく残りを牽制する。
しかし、包囲は徐々にせまくなる。
敵には知性がある。統一された意思の元に襲い掛かってくるのだ。
「このままでは・・・」
ゼロの剣が6体目の敵に止めを刺す。しかし、7体目の敵がリリ姫の側まで迫っていた。
「キャアッ!」
「姫―っ!」
身を挺してリリ姫をかばう。無防備な背中に、大きく振りかぶった斧が襲い掛かる。
その刹那!
「伸びろ!電磁スピア!!」
鮮烈な声とともに一条の光が敵をなぎ払う。
敵を横一列に串刺しにしたスピアは、身に帯びた強力な電流でモンスターを次々と気絶させる。
ザクの注意が新たな敵へと向けられる。
そこには、長く伸びたスピアを手にした一人の騎士が立っていた。
「我が名はストライク。勇気の騎士、ストライク!
モンスターどもよ、今度はボクが相手だ!!」
ストライクと名乗る騎士はスピアから手を離すと、盾から取り出した剣で次々にザクたちを蹴散らしていく。
体勢を立て直したゼロもそれに加勢する。
見る間にモンスターはその数を減らしていくのだった。
今度こそモンスターの気配が消えたのを確認してから、ゼロは見慣れぬ騎士に礼を告げた。
「私の名はゼロ、天駆ける翼の騎士、ゼロ。見知らぬ私達を助けていただき,感謝する」
「私はリリジマーナと申します。ここより遠く離れた異国より、見聞を広めるために旅をしております」
リリ姫は王族の名であるラクロアを名乗らなかった。ここが過去のラクロアであるならば、リリ姫の本名は色々と誤解を招く恐れがあるからだ。
「僕の名前はストライクです。ここラクロア王国の騎士団の団長を勤めています」
「ラクロアの騎士団・・・ラクロア親衛隊・・・!」
「ご存知ですか、遠い異国の方にも知られているとは、光栄です」
「ご存知も何も・・・」
ゼロは気まずそうに一つ咳払いをした。
(文献によるならば、この方は初代ラクロア親衛隊の団長ということになる。
私の・・・大先輩というわけか)
しかし、先輩というにはストライクの様子は随分と頼りなさげではあった。
先ほどの剣技は目を見張るものがあったが、こうしていると戦いのときの覇気はまったく感じられない。
「あの・・・こういうことを聞くのは失礼なのかもしれませんが・・・あなたのその身なりは、もしかしてあなたもガンダム族なのですか?」
「・・・その通りだが、それがどうかしたのか?」
「い、いえ。ボク以外のガンダム族を目にすることがあまりないもので、つい」
「今のラクロア親衛隊には、あなた以外にガンダムがいないのですか?」
リリ姫の疑問に、ストライクの声が大きく歪む。
「いえ・・・その・・・確かに今はボク一人なのですが・・・」
そのストライクの様子に、リリ姫は先ほど思い出しかけていた古い伝承の続きを頭の中で読み上げていた。
(古の昔に勇者あり。古の昔に魔王あり。その名は・・・ガンダム。
星振る時、二つに別れしその名は・・・やがて・・・)
やがて・・・
「とりあえず、ここは危険です。よろしければボクと一緒に王城にいらっしゃいませんか?
あなたのように力のある騎士ならば、きっと歓迎してくれることでしょう」
「ありがたい。是非ともそうさせて貰おう」
こうして、ゼロと姫はストライクの案内の元、太古のラクロア城へと向かったのだった。
「ようこそラクロアへ。私はこの国の王を務めているレビルと申します。今この国は他国からの侵略を受けており満足なもてなしが出来ない状況ですが、どうかご満足いただけるまでご滞在ください」
「王直々にそのようなお言葉、光栄の極みでございます」
恭しく、自分の先祖へと頭をたれるリリ姫。
王に対する敬意と、偉大なる祖先への敬意で、身の引き締まる思いであった。
「翼の騎士、ゼロと申します。王よ、失礼ながら私に出来ることがあればなんなりとご申し付けください。姫を救ってくださった恩を、是非とも返したく思います」
リリ姫はここより遠く離れた国の王族と説明してある。ゼロはその護衛ということになっている。
「それならば、ぜひ我がラクロア親衛隊に!あなたのような方が共にいてくれるというのならばボクも心強いです!」
「ストライク、いきなりそのようなことを言っては失礼であろうが。少々下がっていなさい」
王に咎められ、肩を落としてストライクは下がっていく。
「失礼しました。あの者は腕は確かなのですがなにぶん心が未熟で・・・。
勇者の名を持つものでありながら情けない話です」
「勇者の・・・名、ですか?」
「はい。このラクロアに古くから伝わる伝承です。
<星降るとき、大いなる地の裂け目から神の板持ちて勇者現る。その名はガンダム>
ストライクにはこのラクロアに来るまでの記憶がないのです。
彼がここに現れたときには、その手に不思議な石版を持っていました」
レビル王は、そこで大きくため息をついた。
何か、隠しているような口調である。
「なるほど、彼こそがその伝承にある勇者であると」
「私はそう信じております。ですが、まだまだ未熟。しかもラクロア親衛隊は長い戦で疲弊しており満足に戦えるものはごく僅か。ストライクではありませんが、あなたのように力のある騎士の力を是非ともお借りしたいのです」
「そういうことでしたら、ゼロ。あなたの力、このラクロアのために存分に振るいなさい」
「ははっ」
「おお!力を貸してくれると申すか。かたじけない。心から礼を言わせてもらう」
「いいえ、ラクロアのために力を尽くすことを、私は光栄に思います」
ゼロの言葉に、偽りはなかった。
元の世界に戻るあてはまったくないが、今危機にあるラクロアを捨て置くことなどゼロに出来るはずがない。
「それでは・・・翼の騎士、ゼロよ。そなたにラクロア親衛隊への入団を認めよう」
「ありがたき幸せ。このゼロ、偉大なるラクロア王に誓い、ラクロア親衛隊として恥じぬ働きをして見せます」
こうして、ゼロは二度目のラクロア親衛隊への入団を果たすのであった。
「ゼロ、あなたに言っておかねばならないことがあります」
御前を下がり、あてがわれた部屋でリリ姫はゼロに静かに告げた。
「ラクロア王家に代々伝わる伝承です。間違いなく、この時代のことを表しているものです。
いいですか。この世界にはあなた以外に二人のガンダムが存在します」
古の昔に勇者あり。古の昔に魔王あり。その名は・・・ガンダム。
星振る時、二つに別れしその名は・・・やがて・・・
「その二人のガンダムを、けして争わせてはなりません。なぜならば、この二人のガンダムこそが・・・」
そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
「すいません。入ってもいいですか?」
この声は、ストライクである。何か急いでいるような声だった。
「ゼロ、この話はまた今度にしましょう。
どうぞ、お入りになってください」
「ありがとうございます。失礼します」
ストライクがドアを開けようとした、その時!
轟音が城全体を揺るがす。
二人の部屋の壁に大きな穴が開く。
何者かが強大な力で城壁ごと打ち砕いたのだ。
「な・・・!」
「どうしたんですか!?」
呆然とするゼロ。あわてて入ってくるストライク。
そして……
「キャアッ!」
響き渡る姫の悲鳴。
立ち上る砂煙の中、真紅の影が姫を連れ去っていった。
「おのれ・・・何者だ!姫を放せ!!」
「き、君は・・・!?」
明らかな同様の声を上げるストライクをよそに、ゼロは姫をさらった影に斬りかかる。
すると、影が呪文を詠唱する。
「暗黒の闇より生まれしダークネス=マナよ。魔王との契約の元、今こそその力を我に与えよ・・・」
「この呪文は・・・、それに、魔王だと!?」
ゼロの一瞬の隙を突き、姫を連れ去った影は大きく空を飛ぶ。
間違いなく、それは魔法の力だった。
「くたばれ、ストライク!
超魔法・・・クリムゾン=トルネード!!」
真紅のバラの花びらが絶大な嵐を伴って部屋の中に殺到する。
「いかん!
ブリティスシールドよ!私に力を!!」
盾に秘められた魔法の力が、かろうじて敵の超魔法を食い止める。
しかし、防御範囲はゼロの周囲のみで、その外にいたストライクは敵の魔法の直撃を受けた。
(このマナの希薄な世界で、これほど強力な魔法を使うとは・・・!)
「おのれ・・・一体貴様は・・・」
「ほう、私の魔法を防ぐとは、貴様もガンダムか・・・」
「ぐ・・・やめろ、姫を放すんだ・・・!」
壁に突き刺さった体を起して、必死にストライクが呼びかける。
先ほどの魔法の嵐が立ち込めていた砂煙を一掃していた。
ゼロは壁にあいた穴から外に飛び出す。
そして夜空に浮かぶ姫と、その体を捉えた真紅の影を見上げた。
見まごうことなく、それはガンダム。
真紅のガンダムだった。
「我が名はイージス。魔王、イージスガンダムである!」
次回予告
ラクロアの伝承に残る二つのガンダムの名。
繰り返す歴史、繰り返す悲劇。
ぶつかり合う二人のガンダム。
かつての親友は、歴史を繰り返すかのように袂を分かつ。
ラクロア親衛隊として旅立つゼロとストライクは、
石版と、そして伝説の三つの神器を探す旅に出る。
第三話「三種の神器-力の盾-」
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